長らく使われてきた「2%」という数字
発達性相貌失認の割合については、以前から複数の研究があり、しばしば「およそ2%」という数字が引用されてきました。これは決して小さくない割合ですが、相貌失認という状態自体があまり知られていないこともあり、「まれな症状」という印象を持たれがちでした。
こうした推定値は、調査対象の人数や地域、顔認識の困難をどう測るかという方法によって変わり得るものです。研究が積み重なるにつれて、割合の推定も見直されていきます。
同じ標本でも、基準で異なる推定値
2023年に学術誌Cortexで発表されたDeGutisらの研究は、米国の18〜55歳3,116人をオンラインで調査しました。自己報告と顔認識の2課題を用いたz得点による分類では、軽度を含め3.08%(重度群 0.93%+軽度群 2.15%)でした。約33人に1人は、この標本にこの基準を適用した割合を丸めた表現です。
同じ標本でも、よく使われる厳しい基準では0.93%でした。過去の約2%という推定値とは、対象集団や測定方法が異なります。この違いだけで有病率の増加や、より正確な値への更新とは判断できません。
顔認識の個人差と研究上の区分
顔認識の得意・不得意には個人差があります。DeGutisらの標本では、相貌失認にあたる人を自然に分ける明確な境界は見つかりませんでした。ただし、これだけで相貌失認の区分の有無が確定したわけではなく、論文でも追加の研究が必要とされています。
約3%は、特定の研究上の基準に該当する人の推定割合です。基準を変えれば割合も変わります。重度群・軽度群という分類は検査の閾値にもとづくもので、本人の日常生活の負担の強さを直接示すものではありません。
数字を読むときの注意
オンラインの任意参加標本には代表性の限界があり、この割合から日本の学校や職場に何人いるかを直接推定することはできません。顔認識の困難を理解するときは、対象集団と判定方法を数字とともに確認することが大切です。
日常の困りごとは、研究で使われた割合だけでは判断できません。数字だけで自分や身近な人を判断するのではなく、どんな場面に困っているかを具体的に振り返ることが、状態を理解する手がかりになります。
参考文献・情報源
以下の著者名・機関名は、掲載内容の出典を示すものです。本記事の監修・推薦を受けたことを意味しません。
- 01DeGutis et al. (2023) — What is the prevalence of developmental prosopagnosia? (Cortex)
米国成人3,116人のオンライン研究。z得点による基準で軽度を含め3.08%(重度群 0.93%+軽度群 2.15%)、厳しい基準では0.93%。対象集団・基準に依存する推定値。
- 02Faceblind.org — About prosopagnosia
相貌失認の有病率やスペクトラムの考え方を紹介するポータルサイト。
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