複数の手がかりを組み合わせる
一つの特徴だけに頼ると、髪型や服装が変わったときに取り違えが起こりやすくなります。声の高さや話し方の癖、歩き方や姿勢、体格、よくつける眼鏡やアクセサリー、持ち物のクセなど、複数の手がかりを組み合わせて「らしさ」を積み重ねる方法が、多くの当事者に使われています。
たとえば「声が高めで早口、いつも黒い鞄」のように、二つ三つの特徴をセットで覚えておくと、どれか一つが変わっても残りの手がかりで判断できます。どの特徴が自分にとって覚えやすいかは人それぞれなので、まずは自分がふだん無意識に頼っている手がかりに気づくところから始めると、自分専用の「見分け方」を組み立てやすくなります。
会う前・会う場での準備
待ち合わせでは、事前に服装や立ち位置、目印になるものを具体的に確認しておくと、人混みのなかでも見つけやすくなります。「赤いコートを着て、改札の近くにいます」のように、相手にも一言添えてもらう習慣をつけている人もいます。
会議や集まりでは、座席表や参加者一覧、名札、オンライン会議の表示名など、あらかじめ用意されている手がかりを積極的に活用します。名刺やスマートフォンの連絡先に、本人の同意を得たうえで会った場所や特徴のメモを残しておくと、次に会うときの助けになります。
メモの例
わからないときの尋ね方
誰だかわからないまま話を合わせようとすると、かえって気まずさが増すことがあります。あらかじめ使いやすい言い回しを準備しておくと、その場で困らずに済みます。「顔を覚えるのが苦手なので、お名前を伺ってもいいですか」「以前どこかでお会いしましたよね、念のためお名前を教えていただけますか」など、率直に伝える言い方を自分なりに持っておくと役立ちます。
毎回説明するのが負担な相手には、先に「人の顔を覚えるのが苦手で、次に会っても気づけないことがあります」と伝えておく方法もあります。関係性や場面によって、どこまで伝えるかは本人が選んでよいことです。
完璧を目指さない
どれだけ工夫を重ねても、取り違えや気づけない場面が完全になくなるわけではありません。工夫の目的は、間違いをゼロにすることではなく、間違えたときに確認し直せる余地をつくり、不安を少しずつ減らすことです。
ここで紹介した方法は、当事者の間でよく使われている工夫であり、医学的な治療法ではありません。自分に合う組み合わせは人によって異なるため、いくつか試しながら、無理なく続けられるものを見つけていくとよいでしょう。学校や職場での配慮の求め方については、周囲ができる対処法もあわせてご覧ください。
参考文献・情報源
以下の著者名・機関名は、掲載内容の出典を示すものです。本記事の監修・推薦を受けたことを意味しません。
- 01NHS — Face blindness (prosopagnosia)
声、歩き方、服装など顔以外の手がかりを使う実践的な対処方法を紹介。
- 02Prosopagnosia Research (Bournemouth University, Prof. Sarah Bate)
当事者が日常で用いる代償方略に関する研究を紹介。
本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別の診断や治療に代わるものではありません。サイト全体の文献一覧は参考文献ページをご覧ください。